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“Economics and International Business”(経済および国際ビジネス)のDivisionは、国際貿易および国際ファイナンス、開発経済、エネルギー問題、国際ビジネス戦略などを扱います。同時に、経済を重視する科目も提供されています。

Economics and International Business (EIB)

DHP
EIB

Economics and International Business

“Economics and International Business”(経済および国際ビジネス)のDivisionは、国際貿易および国際ファイナンス、開発経済、エネルギー問題、国際ビジネス戦略などを扱います。同時に、経済を重視する科目も提供されています。

CF

Class of 2019 T.H

Foundations in Financial Accounting and Corporate Finance 

by Laurent Jacque

Class of 2019 E.M.

フレッチャースクールに入学して最初の1週間はオリエンテーションが続きます。その中でいかに自分の履修スケジュールを組み立てるべきかという講義があります。サブタイトルは “How to Chart your Fletcher Academic Journey”となかなか威勢が良いのです。これは2年間の大学院での学業をいかに実りあるものにするかの指針となる大切な講義です。登壇したのはジャック教授というかなり年配の方でした。私たち新入生は耳を大きくして説明を聞き始めたのですが・・・何を言っているかさっぱりわかりません。これには困りました。英語ネイティブのクラスメートに聞くと多少聞き取りづらいフランス訛りの英語だが問題ではないと答えます。しかし、こっちは皆目見当がつかない状態です。幸い内容をまとめた資料が配付されており、それを読めばほぼ全容が分かるようになっており胸をなでおろしました。私はこれまで、長い国際関係の職務経験で様々な訛りの英語を使う人々と関わってきました。確かにフランス語、イタリア語、スペイン語圏のビジネスパースンは母語の癖が強く出る傾向があります。しかしこのじーさん(失礼)はかなりひどいものでした。

 

 セメスターが始まると、我々MIBの学生には必修科目がいくつかあり、その中でも最重要とされるクラスがCorporate Financeです。そして登場したのがこのジャック教授でした。悪い予感がしました。まず科目自体が非常に難解です。ビジネスを通じてある程度のファイナンスの知識はあるつもりでしたが、実践で培った知見とアカデミックに理論を学習するのはやはり異なります。しかもフランス語のような英語で講義が続くのです。

 学生にとっての脅威はジャック教授のコールドコール、すなわち無作為に学生を指名して質問を重ねるというものです。当てられた学生は当惑し、きちんと予習していない者はクラスで醜態を晒すことになります。それでも学生側もこの事態に対処する方策を編み出してくるものです。ある者は極力視線を合わせないようにします(あまり効果はありません)。またある者は比較的簡単な質問が出てきた時に先制攻撃とばかりに手を上げて指名してもらい回答します。するとそれ以降当てられる確率が下がります。私は教室の最前列に座っていたため、どうやらジャック教授の視界の下限あたりにいたので比較的指名攻撃を受ける確率が少なかったようですが、私のとった手口は目力で訴えるというものでした。ここぞという時には顔を上げ、ジャック教授を正視して念力を送ります。すると私の気配に気がついて指名してもらえるという流れです。ただしいつもうまく行くとは限りません。わからない質問に当たった時は開き直ってとにかくクラスを盛り上げる回答を行い、一応の貢献をすると自己満足していました。ある学生は教授の質問を差し置いて自分の質問を投げかけるという戦法をとりましたが、教授に冷静に「まず私の質問に答えよ。君の質問はその後だ」と優しく諭されていました。

 

 講義の回数を重ねるにつれてジャック教授の深遠なる知識とフランス人らしいエスプリの効いたユーモア、学生とのコミュニケーションを好む姿勢に魅かれるようになります。科目は最後まで難解ですが、このような偉大な教授に師事できる幸せを味わえるようになります。私は彼のオフィスアワーに出向いて世間話をするのが楽しみでした。もちろん科目の話題が優先ですが、教授も幅広く話をしたいのがありありと見え、二人でよく ファイナンスから脱線した談義をしたものでした。米国の大学では教授のオフィスアワーは宝の山です。遠慮することなく行くべきです。ちなみにジャック教授の場合、最初の挨拶をフランス語でやると機嫌が良くなります。難しいものではありません。ボンジュール、プロフェッスュール・・・で十分なのです。後の会話の弾むこと請け合いです。

LIIP

Large Investments and International Project Finance

by Phil Uhlmann

Class of 2019 A.S.

カントリーリスクに重点を置いたプロジェクトファイナンスの授業で、ケーススタディをベースとしています。カントリーリスクは狭義には為替リスク(為替レートの変動に伴うリスク。)を指しますが、政治リスク(行政の制度変更、地政学的なリスク等。)を含めた広義な意味で議論が行われます。Uhlman教授はフレッチャーの博士号を取得されており、その前はカナダの商業銀行でバンカーを25年ほどされていました。最初の授業ではフィナンシャル・タイムズ(UK版)、エコノミストを読むべし、長期金利は毎朝確認すべしといった話があり、その後の授業の冒頭では主だったニュースや長期金利の推移、NFL等のプロスポーツの話をして教室を暖めるなど、幅広い学びの機会のある授業でした。

ケーススタディは、1週間2コマの授業で1ケースのペースで、扱う内容は新興国の電力・資源プロジェクト、先進国の飛行機、テーマパーク、スタジアムなど多岐に渡ります。事前の必修科目はありませんが、コーポレートファイナンスの知識、プロジェクトファイナンスの簡単な背景理解があると授業の理解の助けになります(例えば、授業でCAPM、DCF法の説明はありましたが、こうした流れで計算するといった概略の説明のみで一定の前提知識は必要と感じました。)。

授業はリスク分析が中心であるため、定性的な議論がメインに行われます。具体的には、ケースごとに出てくる新たな概念(各種リスク、ファイナンススキームなど。)の説明を受けつつ、想定されるリスク、その軽減方法について議論が行なわれました。これは、教授の問題意識として、フレッチャーの強みを活かすためには、モデリング等のテクニカルな部分は専門の人材に任せて、最終的な判断を行うための検討に貢献することが重要という考えがあったからと思います。

しかしながら、キャッシューフローなど定量的な分析を行う必要もあります。授業では、ケースレポート2つ、中間レポート、最終レポートの提出が要件とされたためです(最終レポートのみ個人、その他はグループワーク。)。ファイナンスの概念を理解した要点を押さえた分析が目標とされており、教授は複雑な試算を好まず、示される解法は簡便なものでした。グループワークでは、自分の立ち位置(役割分担の際に自分の強みを活かすか、自分の能力のストレッチを目指すか。)を考える必要があり、また、個人による考え方・作業の進め方の違いを体験することができて非常に有益でした。また、レポートはコメント付きで返却されるため、どのようなポイントを教授が重要と考えているか把握することができて理解が深まりました。

Leader

Leadership: Building Teams, Organizations, & Shaping Your Path

by Alnoor Ebrahim

Class of 2017 T.M.

誰しも必ずこれまでのキャリアの中で、難しい相手に厳しいことを伝えなければならない場面、チームがチームとして機能していない場面、組織を変えたいと思うがどうすべきか途方に暮れた場面に直面してきたはず。また、上司の資質・能力次第で、部下が最大限能力を発揮する、あるいは逆に持っているポテンシャルを発揮できず腐っていくことも目にしてきたはず。そして、将来自分に課せられうる「manager」という役割を果たせるかということについて不安を感じることもあるはず。

 

Leadershipの講義は各講師によってその目的・重点が大きく異なる。このAlnoor Ebrahim教授による授業は、将来様々な組織でmanagerとして高いパフォーマンスを発揮できるよう、必要となる素養や考え方を教えてくれるものである。

 

具体的にはハーバードビジネススクール(HBS)作成のケーススタディを通じて、以下の点を学ぶ。

①Leading team(チーム・マネジメント)

②Enhancing Interpersonal Effectiveness(1対1のコミュニケーション、コーチング)

③Designing and Aligning Organization(組織を構成する諸要素(コアタスク、構造・制度、人材、文化)の間の整合性を如何にとっていくか)

④Leading Change(組織変革をもたらす際のアプローチ・留意点)

⑤Developing your path(自らのキャリア(ワークライフバランス含む)を如何に戦略的に設計していくか)

 

(参考)2016年の講義で取り上げたケース例

http://www.hbs.edu/faculty/Pages/item.aspx?num=16421

http://www.hbs.edu/faculty/Pages/item.aspx?num=30252

http://www.hbs.edu/faculty/Pages/item.aspx?num=26880

http://www.hbs.edu/faculty/Pages/item.aspx?num=12492

http://www.hbs.edu/faculty/Pages/item.aspx?num=38870

 

 

講師のEbrahimは、MITで学士号(環境工学)、Stanford Universityで博士号(環境計画・管理)を取った後に、非営利団体の組織改革・評価の研究に従事。2016年に正式にフレッチャースクールに移籍するまでは、HBSでリーダーシップ関連の講義を担当していた。彼の教育者としての人柄、授業に対する真摯さ(厳しさ含む)、ファシリテーターとしてのスキルの高さから、フレッチャースクール有数の講師として評判が高い。

http://fletcher.tufts.edu/IBGC/Dialogue/SpeakerArchive/Alnoor-Ebrahim

 

2016年秋学期の日本人受講者は以下のように評価する。

“これまでの日常業務及び開発事業の現場で直面してきた(身に覚えのある)課題と関連付けることができ、自分のこれまでの業務の仕方を振り返る良い機会となったとともに、今後中堅職員・管理職として、課・事務所のマネジメントや組織全体の変革に取り組む上で重要となる視点・考え方を学ぶことが出来た。”

 

“21世紀型のリーダーシップ論を日本で体系的にきちんと教えられる人は少ないため米国で履修した方が良い。クラスをペースメーカーに自分自身のリーダーシップ経験の振り返りや内省に使うのに適していた。

Class of 2019 Y.M.

フレッチャーの2018年のベストファカルティに選ばれたアルノア・エブラヒム教授によるリーダーシップの講義です。エブラヒム教授は数年前まではHBSで教鞭をとっており、NGOのマネジメント、リーダーシップなどを教えてきた方です。授業は、複数のモジュールに分かれており、「チーム運営」、「1対1のコミュニケーション」、「組織デザイン」、「組織変革」、「キャリア形成」というテーマで1学期を通して学びます。

授業で扱うケースは、様々な産業、様々なポジション、そして様々な課題から成り立っており、将来自分がリーダーになるにあたり直面するであろう多くの場面に遭遇します。実際に自分がそのケースの登場人物になったつもりで分析し、自分だったらどうするか、短期、長期のアクションプランを考え、それをベースに授業でディスカッションを行います。例えば。

・予期せず初のマネージャーポジションに就いた者

・文化の違いでまとまりの悪いグローバルチームを率いるマネージャー

・成績は良いが文化になじまないマネージャーを持つディレクター

・社外にネットワークを築き、次々とキャリアを実現していく起業家

・強烈な企業文化を築くことに成功したCEO

・産業界の悪しき慣習を、社会を巻き込み変えようとしたCEO

等々、多様なケースがこの授業の魅力です。

途中、自身のこれまでのリーダーシップ経験を授業のフレームを使いながら振り返りレポートを書く機会がありましたが、ポジションこそ違えど授業で扱ったケースに近いような場面、課題に自分も遭遇してることに気づき、自身の経験の棚卸しにもなりました。

また、決まった答えのないリーダーシップという授業で、アメリカ人学生が他のよりアカデミック寄りな授業と比べても我先にと手を挙げ、活き活きと自分の主張をしているのを見ると、アメリカの教育にはやはり自分の意見を他の人と交わすディスカッション・ディベート文化が根付いているのだなあと実感します。その中で、多くの学生がワーク・ライフバランスや企業の社会的責任を重視していたのも印象的でした。また、アメリカに来てからネットワーキングが大事だと何度も聞かされ、それがアメリカの文化なんだと思っていましたが、実際には相当数の学生がネットワーキングという言葉(日本で言う「人脈」でしょうか)に功利的なネガティブな響きを感じていたことも、この授業を受けていなければ分からない気づきでした。

ネゴシエーション、リーダーシップなどのソフトスキル系の授業はやはり日本にはなかなかない、アメリカ特有の授業だと思います。授業の内容それ自体のみでなく、アメリカ人や他国の学生のものの考え方に対する理解を深めるうえでも多くの学びを得られる授業ではないでしょうか。

SM

Strategic Management

by Bhasker Chakravorti

Class of 2019 Y.M.

フレッチャーMIBに入学をするとまず初めに受けることになる授業で (MALD等の方も取れます)、いわゆる経営戦略の授業です。プレセッションという位置づけで秋学期開始前8月後半の丸2週間をかけて行う授業ですが、いきなりフルストッロルで始まります。土日を除いた毎日3時間、毎回1~2のケーススタディを扱いディスカッションを行うザ・アメリカ大学院という授業です。並行して2つのグループワークも行い、この秋学期で最も負荷の高い授業だったかもしれません。ですがその労力に見合った新たな学びに満ちた授業でした。

教授はBhasker教授というマッキンゼーでパートナーを務められていた方で、ハーバードやMIT等でも教えていたそうです。また、旧モニターグループ(マイケルポーターを筆頭にHBSの教授が立ち上げたコンサルテイング会社)のパートナーを務めていたこともあってか、授業では5 Forces Analysis (業界構造分析のフレームワーク) を重視します。私は学部時代にも経営戦略の授業を受けており、また自身で本を読んだりもしていましたが、5 forcesと言っても情報の整理術でしょ、くらいの認識しかありませんでした。

しかしBhasker教授の説明が鮮やかなのは、5 forcesで業界構造を分析しながら、ではなぜその業界で競争優位を保てている企業があるのかという点に着目し、いかに企業の戦略によって業界構造を自社に有利に作り変えるかを考察していく点です。先生はいつもこれを”Where to play?”、”How to win?”という問いに落とし込み、繰り返し強調します。例えば、飲料業界は一見参入障壁が低く、実際に競争も激しいのですが、コカ・コーラ社の利益率はとても高いです(少なくともケース執筆当時は)。コカ・コーラはブランディングによって、コーラという一つのジャンルを作り出すことで参入障壁を高くすることに成功しました (実際にはペプシというライバルがいて、そのコーラ戦争がこのケースのテーマです)。あるいは、サムスンの半導体事業は、コスト構造を見ると他社よりも仕入れ値が安いことが分かります。これは(他にも要因はありますが)比較的安い労働力等を駆使してコスト優位を築くことで増やした販売量を武器に、サプライヤーに対して大きな交渉力を持ち、さらにコストを下げるという好循環で競争優位を築いていると分析されます。コストリーダーシップとは安かろう悪かろうではない、という話も腑に落ちました。5 forcesをこのようにダイナミックな分析に使うという発想は、私には少なくとも目から鱗でした。(私の勉強不足かもしれませんが、、)

他にもバリューチェーン、ブルーオーシャン戦略、ゲーム理論、コスト構造分析等々の経営理論に一通り触れますし、CSRを企業戦略にどう取り込むか、海外展開の際のContextual Analysisなどフレッチャー生の好むようなトピックも扱います。

 英語で学ぶのが初めての日本人にとっては、クラスでの発言やグループワークなどはハードルの高いものと思えるかもしれませんが、プレセッションというタイミングで思い切って前に出ることで意外と大丈夫だ!という大きな (?) 自信をつけることができ、その先のセメスターに向けて良いスタートダッシュを切ることができると思います。

Class of 2018 D.T.

1.概要

フレッチャースクールでは、秋学期が始まる9月の前の8月後半(2016年は8月15日~26日)に、Pre-Sessionと呼ばれる授業が開講されています。具体的には、Cheyanne Scharbatke-Church教授によるDesign & Monitoring of Peacebuilding and Development Programming(通称DM)とBhaskar Chakravorti教授によるStrategic Managementの2つの授業が開講されています。Pre-Session中は、フレッチャースクールに隣接している学生寮であるBlakeley Hallに希望者は住むことも可能です。授業は2週間に渡って毎日3時間ずつ行われるほか、授業以外の時間も予復習やグループワークなどがあり決して楽とは言えない内容ですが、意欲的な多くの学生によって受講されています。

Strategic ManagementはMIBプログラムの学長で元マッキンゼーのパートナーであるBhaskar Chakravorti教授による「経営戦略」をテーマにした授業です。MIBプログラムの学生にとっては必須の授業であるものの、MALD、MA、LL.M.などの他のプログラムの学生も本授業を取得していました。

授業はHarvard Business SchoolやINSEADのケースを利用したケースディカッション形式で行われます。2週間という短期間ながら、Value Chain Analysis、5 Forces Analysis、Contextual Readiness Analysis、Blue Ocean Strategy、CSRなど様々なフレームワークやコンセプトに触れる機会がありました。Robert Mondavi(ワイン会社)、Coca ColaとPepsi、Samsung、The New York Timesなど様々な業界の企業のケースを扱い、ケースを通じて業界への理解が深まりました。

5人1組のグループワークとして、新興国の企業の海外戦略を考える課題が与えられます。2016年ではGoJekというインドネシア版Uber会社や、Maro Tandoorsというパキスタンのレストランチェーンなど学生が選ぶ企業は面白い事業を展開していて、他のグループのプレゼンからも学びがありました。

2.魅力

第一に、Bhaskar教授によるファシリテーションが挙げられます。個々の学生のバラバラの意見を救い上げて一つの方向性に導いて授業全体での学びを与えようとされます。また学生が発言しなかった角度から大局的に指摘することもあり、分析や考え方の広がりを感じました。Bhaskar教授はMIBプログラムの学長はもとより、フレッチャースクール内の研究センターであるIBGC(Institute for Business in the Global Context)の所長で、ハーバードビジネスレビューにも多くの記事を寄稿されています。ワイン会社のケースではワインの試飲をさせどれが高いワインか答えさせたり、ケース企業に関連したビデオを流したりなど生徒を飽きさせない工夫が凝らされています。

 

第二に、多様なバックグラウンドの学生の発言から学ぶ点が挙げられます。2016年には、アメリカ、ルワンダ、インド、ベトナム、インドネシア、ネパール、パキスタン、アルバニア、オーストラリア、アルゼンチン、キューバ、アイルランドなど様々な国々からの学生が参加していました。国籍のほか、国際機関、NGO、大手企業、スタートアップ企業など学生の勤務経験も多様です。MIBプログラムの必須授業のためMIBプログラムの学生はもちろんのこと他プログラムからの参加学生とのネットワークは秋学期以降も活きてきます。

 

第三に、秋学期を前にしたウォーミングアップが出来る点が挙げられます。毎日20ページ以上の英文のケースを読んで英語ネイティブとの議論の中に手を挙げて発言するというのは日本人留学生にとってはなかなか大変なことですが、秋学期・春学期にはより大変な授業も多い中で良いウォーミングアップとなりました。本授業のグループワークでGoogle Docsの使い方や異なる意見の学生との議論の仕方、互いの強みと弱みを補って一つの成果物を作り上げていくことを多少なりとも経験することができ、秋学期以降のグループワークの助けとなります。

EM

Econometrics

by Jullie Schaffner

Class of 2019 Y.M.

フレッチャーでベストファカルティにも複数回選ばれたシャフナー先生のエコノメトリクス(計量経済)について紹介します。フレッチャーと言えば安全保障というイメージを持たれている方には計量経済?と意外に感じられるかもしれませんが、実際にはフレッチャーは世界銀行を始めとした国際金融機関を志す学生が多く在籍し、開発経済関連の授業も多くあります。そして、その基礎となる計量経済の授業は先生の人気もあいまって大変多くの学生が受講します。今年も、予定の履修者数60人を遥かに上回る数の学生が応募し、急遽早朝にクラスを1つ追加した程でした。

この授業では、平たく言えばある事象に対し、ある要因がどの程度寄与しているかを計量的に分析するための手法を学びます。基礎的な統計の知識はあることを前提に、計量経済とはどのような学問かといった基礎から始まり、様々なタイプの回帰分析や、バイアスの取り除き方を学ぶことができます。授業で理論の解説を、そしてグループ課題で実践を行う構成になっており、その他個人の理解度を確認するための練習問題が用意され、オーガナイズされた授業となっています。一学期を終了すると、自身で様々な回帰分析を行なったり、計量経済を用いた論文を読んだりすることが出来るようになっています。グループ課題は統計ソフトSTATAを使った問題集と、実際に自分達でテーマを設定して分析をするプロジェクトから成ります。私たちのグループは、国家の汚職レベルが、政府系ファンドからの投資の流入にどのような影響を与えるか、というテーマでリサーチを行いました。

計量経済に触れたことのない人は、難しそうだし英語で大丈夫かなと不安を覚えるかもしれませんが、教授のスライドは読めば分かるよう出来ており、またインターネット上には日本語の情報ソースも多くあるので、問題ないでしょう。ソーシャルサイエンス、ポリティカルサイエンスの論文では、頻繁にこの計量経済が使われています。開発経済が専門でないとしても、この授業を取ることでしっかりと(正確に、時に批判的に)読めるようになる論文が増えるというだけでも、履修価値はあるかと思います。

PK

Practical Knowledge

by Amar Bhide

Class of 2019 Y.M.

“Practical Knowledge”は実用的な知(practical knowlegde)についてディスカッションを通じて考えるゼミ方式の授業で、practicalと冠されながらどちらかというとphilosophicalな授業です。世の中に広がっている実務上のセオリーや手法がどのように生まれ発展したのか、その特徴、適用可能性、また限界について考え、往々にして過大評価されがちなこれらの知を等身大で捉えなおそうという授業です。カテゴリとしてはビジネス系の授業となっていますが、扱うテーマは医療の進歩から経営、さらにはマキャヴェリまでと幅広く、決してビジネス系の学生だけを対象としたものではありません。実際、MIBとMALDは半々でした。大学院では多くの理論やツールをベストプラクティスとして学びますが、それらを一歩引いて冷静に捉え、頭の中にマッピングするような授業です。

Bhide教授は日本のビジネス界が世界をブイブイ言わせていた頃のマッキンゼー東京オフィスで働いていたこともある方で、いわゆるアメリカのデファクトスタンダードになりがちな考え方(ゴールは明確に、数値化して考えよ、インセンティブを与えよ等々)に疑問を投じることも多く、留学での学びに幅を持たせることができました。また、自身で本やケースも多数執筆しており、その知識と洞察力にはしばしば舌を巻かされました。

経営理念・経営計画等のゴール設定、RCT・ABテスト等の検証手法、マニュアル・チェックリスト等の見える化、シックスシグマ・デザインシンキング等の問題解決手法、5フォース・破壊的イノベーション等の経営戦略、他にもナレッジシェアリング、コミュニケーション、インセンティブ、他者への影響力等々のトピックを1授業1つのペースで扱います。各トピックに関わる論文を事前に5~10本程読み込み授業でディスカッションするという形式で、準備はかなり大変でしたが、1つのトピックに対し様々な(時に対立する)論文を読むという習慣がついたのはとても良かったです。論文は教授により厳選されたものばかりで、そのリーディングリストを読むだけでも履修価値ありと思えるほど勉強になりました。(おそらく)他の大学院ではあまりないオリジナリティの高い授業で、フレッチャーに来て良かったと思える授業の1つです。

Petroleum

Petroleum in the Global Economy

by Bruce M. Everett

Class of 2019 T.H.

フレッチャー卒業生で、長年に渡って大手石油メジャーのエクソンモビールで実務に携わったEverett教授が、石油・天然ガスビジネスの上流(探鉱、開発、生産)から下流(精製、輸送、販売)までカバーするという授業です。自身のCapstone projectがエネルギー開発に部分的に関係していることもあり、今回履修しました。

授業構成としては、上述の各工程を各回で順を追ってカバーしていく形で、教授から各工程の概要が、経済的、技術的、あるいは政治的観点から説明されます。なお、履修の前提条件として、経済学の入門コース(EIB E201 Introduction to Economic Theory)相当を完了していることが求められますが、経済学や会計学初心者に対しては教授が補講という形で、授業や後述する課題に用いられる概念や手法についてはフォローをしていました。また、幾つかの回では、Everett教授の知人を中心に、外部から招いた実務家の講師によるゲスト・レクチャーもありました。

課題は計4回、うち3回は、Excelを用いて20〜30年スパンのプロジェクトについてキャッシュフローのモデルを作成し、経済的観点からプロジェクトの評価を行うというもの。最後の1回は、同じくExcelを用いますが、いわゆるエコカー(ハイブリッドカー、プラグイン・ハイブリッドカー、電気自動車)と旧来型のガソリン自動車について、コストとCO2排出量を比較するというものでした。いずれの課題もグループワークの形で行います。自然にやっていると経済学や数学、Excelに強いメンバーとそうでないメンバーの間で、どうしてもコミットメントに差が出てきますが、後者のメンバーには政治的、社会的な観点からの考察を担当してもらうなど、グループ内でのマネジメントをしっかりすることで、グループワークのメリットを引き出せるように思いました。

エネルギー政策も所管する官庁に勤めていながら、これまで担当部署に着任したことがなかったこともあり、恥ずかしながら決してこの分野に対する造詣が深い訳ではなかったのですが、この授業を通じて、エネルギー輸入大国である日本が、どのようなエネルギー政策を採るべきか、その裏付けとなる思考の枠組みを得ることができたように思います。

なおEverett教授は、さすがエネルギー業界の方と言うと語弊があるかも知れませんが、化石燃料悪玉論に対しては、授業期間中を通じて、かなり熱心に反論をされていました。東海岸という立地上、また、国際関係大学院という分野上、どうしてもフレッチャースクールにはエコ志向の学生が多いのですが、Everett教授は、そうした学生達を前に、多くのデータを示しながら、化石燃料の地球環境にもたらす影響や化石燃料を排除することの費用対効果等について、エビデンスに基づいて議論をする必要があると熱弁されていました。ともすれば「先進的」で「リベラル」な議論一色となりがちな中で、このような議論もまた大変印象に残りました。

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