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Learning Events

 

Learning Events in the Fletcher School

LEARNING EVENTS

フレッチャースクールの特徴の一つ、授業以外での学びの場についてご紹介します。

フレッチャースクールの特徴の一つは、授業外での学びの場の多さです。普段の授業時間内では行えないような大規模なシミュレーションイベント、定期的に行われるゲストスピーカーを呼んでの講演会、また学内の各クラブも様々なイベントを企画しますので、学期中はどのイベントに参加しようか時間の管理に困るほどです。ここでは、実際に日本人学生が参加したイベントについて体験をもとに紹介します。

ISSP (International Security Studies Program)

Class of 2019 J.T.

ISSP (International Security Studies Program) は、安全保障系のトピックについて生徒に多様な学習機会を提供することを目的としたフレッチャースクールの内部機関で、ディレクターはロバート・シュルツ教授(授業紹介の「Role of Force」参照)が務めています。

ISSPは、安全保障に関心を持つ学生にとって、貴重な機会を数多く提供してくれます。以下に紹介するように、授業以外に幅広く刺激を受けられる環境が整っていることは、フレッチャースクールを選択する大きな利点です。

 

【ミリタリー・フェロー】

毎年、各軍種(陸海空軍と海兵隊)から数名ずつ、現役軍人がフレッチャースクールに招聘されています。彼らは学生として授業を受ける一方、個別のオフィスを与えられ、スタディグループのまとめ役を務めるなど、外部講師のような役割も同時に担います。彼らの階級は中佐から少佐クラスで、一般企業でいえば脂の乗った中堅どころ。一度自己紹介すれば必ず名前を憶えて挨拶してくれ、授業でも積極的にリーダーシップを取ってくれる姿からは、否応なしに軍人のたしなみを感じさせられます。しかも、彼らの中にはトム・クルーズの映画で有名なトップガン(米海軍で最優秀の戦闘機乗りだけが入れる学校)を卒業した者もいるほどの粒揃いで、米軍側も学会との交流を重視して優秀な人材を派遣していることが伺えます。

こうしたフェローの存在は、米軍人の生の声を聞く貴重な機会を我々に提供してくれます。また、彼らも学生とは胸襟を開いてコミュニケートしてくれます。とある授業中に日本の集団的自衛権と憲法をめぐる問題にプレゼンした際には、「共同演習で自衛隊の練度の高さはよく知っているし、日本が米国に積極的に協力できるようになるのはいいことだ」といった経験者ならではの意見を出してくれたり、授業後にわざわざ私に話しかけて自分の疑問をぶつけてくれるフェローもいました。こうした現役軍人と学生として交流できるのは、日本では決して得られない大きなアドバンテージです。ただ、議論が盛り上がってくるにつれて自然と彼らの英語も早口になっていくので、ついていくのは大変ですが(笑)。

【レクチャー・シリーズ】

各学期中、週に一度の頻度で部外講師による安全保障系のトピックについての講演会が開催しています。フレッチャー生なら無料で誰でも参加できる機会でありながら、講師のメンツは不相応なほどに豪華です。2017年秋学期開催分だけでも、

・ロバート・ネラー海兵隊総司令官

・ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長

・レイモンド・トーマス特殊作戦軍司令官

といったビッグネームが顔を揃えます。この他にも、インド海軍の退役海軍中将が南アジアの核セキュリティについて講演したり、軍人だけでなくニューヨークタイムス紙の編集者がトランプ政権について論評したりと、顔ぶれのバラエティも豊富です。

いずれの講演も、各々の職掌に関する課題と展望について一通り話した後、オーディエンスからの質問を受け付けるパターンが大半です。講演そのものも各界の専門家だけあって興味深いのですが、中身はみなさんがフレッチャースクールに入学してから直接聞いていただくとして(笑)、いくつかの講演に出席していると、軍からの講演者の多くがリーダーシップや組織論に言及することに気づきます。何万人という部下を背負っているだけに、その言葉には重みがあり、傾聴に値するものばかりです。せっかくなので、上掲のネラー海兵隊司令官の言葉で本稿を終えることにしましょう。

 

――私が海兵隊に入ったのはベトナム戦争直後の1975年だった。新兵の頃は米ソの二極だったが、テロリズムの台頭や多極化によってアメリカの戦略環境は大きな変化にさらされ続けている。海兵隊は、こうした環境の変化に対して常に柔軟であらねばならない。組織にchangeをもたらすことは容易ではないし、必ずnaysayerはいるものだ。しかし、より良い環境を求めてchangeすることは組織にとって必須だ。自分は常にそれを忘れないようにしてきた。

ISSP
Naval

Class of 2019 J.T.

US - Japan Naval Leadership Talk

3月6日にFletcher Japan Club とISSPとの共同で、米海軍大学校教授の武居智久氏とロバート・グリアー元米海軍少将を迎えて「Japan-US Naval Leadership talk」と題するイベントが開催されました。2016年末まで海上自衛隊トップの海上幕僚長を務めた武居氏と、ロナルド・レーガン空母打撃群を率いてトモダチ作戦にも参加したグリアー氏は、いわば日米同盟を長年海から支えた立役者といえます。イベントでは、そんな二人がアジア太平洋地域の安定に向けて必要なものは何か、思うところについて議論しました。再三の圧力に抗して核開発を継続する北朝鮮、軍事的影響力を増大させ続ける中国、巨大なプレーヤーとしての可能性を秘めたインド。アジア太平洋は決して凪いだ平穏な海ではありません。その海を安定した状態に保つため、ともに世界有数のNaval Powerを有する日本とアメリカがどう連携できるのか。このホームページでは残念ながら講演

当日の会場の様子。

内容の仔細をご紹介することはできませんが、弾道ミサイル防衛からサイバー戦まで、海軍の枠にとどまらない突っ込んだ議論が交わされ、教授陣を含めた百人を超す聴衆も真剣に聞き入っていた様子でした。

100人を超す、と書きましたが、生徒数400人あまりのフレッチャースクールにおいて、「Japan」と銘打った生徒主催のイベントにこれだけの人数が集まるのはとても珍しいことです。アメリカにおける東洋の島国「日本」という国の存在感は、私自身が渡米前に抱いていたよりもずっと低いものでした。ほんの30年ほど前、日本人がマンハッタンを買い占めると騒がれた時代は遥かに遠くなりました。実際、フレッチャースクールには相当数の日本人が在籍している一方で、日本を専門とする教授はおらず、日本をメインで扱う授業もありません。これは、近隣のハーバードケネディスクールや他の大学院でも同様と聞きます。

そのような状況に課題意識を持った発起人のJapan Club有志は、入学時に漠然と東アジアに興味を持っていた同級生が、研究対象に日本ではなく中国や朝鮮半島を選んでいく中、日本という国を何とかしてアピールする機会を作れたら、という一念でこのイベントを企画したそうです。

結果、上述の通り、聴衆は社会人や他大学からの参加者も含めて100人を超えました。たとえ日本のプレゼンスが相対的に下落しているとしても、日本という国に魅力がなくなったわけでもなければ、日本への興味・関心がなくなったわけでもないということだと思います。大切なのは、たとえ草の根レベルであっても、日本という国に関心を持ってもらうきっかけがあるということなのでしょう。

44の国から生徒が集まるフレッチャースクールでは、日本という国を外から眺め、また小さいながらも日本のために一仕事をすることができます。インターナショナルな環境で自分の問題意識をカタチにする経験は、時間が流れてもきっと忘れられないものになるでしょう。フレッチャースクールは、誰にでもそんな環境を提供してくれる懐の広さを持っています。

SIMULEX

Class of 2019 Y.M.

SIMULEX

フレッチャーの名物イベントSIMULEXについて紹介します。このイベントは秋学期恒例の安全保障シミュレーションで、毎年異なるシチュエーションが設定され、丸2日間に渡り開催されます。今年は150人余りの学生が参加しました。各国にアサインされた学生は実際の政府さながらに国を組織し、めまぐるしく移り変わる状況に応じて国としての行動を決断・実行します。2017年は北朝鮮が核開発を推し進め、事態がエスカレート、他国はときに協調、ときに敵対しながら状況をマネージしていくというものでした。プレイヤーとなる国及び地域は北朝鮮、アメリカ、中国、韓国、日本、台湾です。なお、P245 Crisis Management & Complex Emergenciesを取る学生は参加必須のイベントとなります。

私はその授業を取っていたこともあり、日本人と他国からの参加者半分半分のチームで日本の総理大臣を務めました。国単位で行う意思決定は、ミリタリー出身者を中心に組織されたコントロールチームを通じて実現されます。それがどのような結果を生むかはコントロールチーム次第、例えば北朝鮮の核施設を攻撃し破壊する、というようなアクションを伝えてもコントロールチームがそれは実現性が低いと判断すれば「失敗」という結果が出てくるわけです。またコントロールチームは、定期的に各国のコントロール外のイベントを発生させ、シナリオをコントロールします。その絶妙なさじ加減がこのシミュレーションにリアリティを与えるわけですが、その辺りはこのイベントの長年のノウハウの蓄積が物を言います。また、国同士で連携を取って共同声明を発表し他国にプレッシャーをかけたり、共同で軍事作戦を実行したりすることで、アクションの成功確率を上げたりもできるのですが、そこに至るまでには閣僚会談や首脳会談を行ったりし、まさに外交が繰り広げられます。誰が会談に出席するのか、何を議題に持っていくのか、どこまでは会談で決めてきてしまって良いか、どこからは持ち帰った方がいいか、そういったことをめまぐるしく状況が変わる中で議論しました。戦略的に動くことが求められます。

民間出身の私からすれば安全保障分野は分からないことだらけで、安全保障分野出身の方たちに助言をもらったりし、まさにインタラクティブな学びの場でした。また月並みですがインターナショナルな組織をマネージするということの難しさも痛感しました。日本人同士だと暗黙の了解として成り立っていることが全く成り立たないという状況が頻発するわけです。1日目の終わりにこのままではまずいと、日本人以外の学生も含めて組織構造やルールの見直しを夜遅くまで行い、2日目には大幅な改善を見ることが出来ました。四苦八苦しながらも2日間を乗り切ったということは非常に大きな自信になりましたし、実際その後に似たような状況に置かれたときもどっしりと構えることが出来るようになりました。コミュニティ豊かなフレッチャーには自分から飛び込めばそのような経験を出来る機会がたくさんあります。授業以外の場でも多くの学びを得ることが出来るのは、フレッチャーの大きな強みと言えるでしょう。

Class of 2019 Y.M.

Multilateral Negotiation Simulation

フレッチャーの最大の魅力の1つは、グループワークを始めとしたインタラクティブな学びの機会が多さだと思います。そんな中、年に数回行われる大人数参加型シミュレーションのイベントは、毎回異様な盛り上がりを見せます。私はそのうちの1つ、多国間交渉シミュレーションに参加しました。これは国際交渉の授業を取っている学生向けのイベントで、朝から夕方まで7時間ほどかけて1日がかりで行います。内容としては15ヵ国からなる化学兵器撲滅を目指す国際機関において、各国の利害を想定したうえで交渉を行い、1枚の合意文書を作成するというものです。私は、イベント3日前に突然教授から「あなたにはワーキンググループの議長をやってもらう」というメールを頂き、当日30人(各国から2人参加)の会議のファシリテータを務めることに。事前に各国共通と国別それぞれのインストラクションペーパーを渡され、各々それを読み込んで交渉事項の優先順位、取るべき態度などを頭に擦り込み交渉に臨みます。国によってはスポイラー(進行を滞らせる人)の役割を与えられていた国もあったようです。

交渉が始まると、みんな我先にと手を挙げて発言をしようとします。議長としては平等に当てているつもりでも、もっとこっちに当ててくれなどと文句を言われたりし、会議を回すだけでも一苦労ですが、さらにその議論を1枚の合意文書に落とし込むというのですからその難しさはご想像頂けるかと思います。そこで登場するのが、この交渉の隠れテーマでもあるのですが「ワンテキストプロセス」というものでした。平たく言えば議論はオープンに行うが、文書は議長のコントロールのもとで1枚の文書のみを編集するというものです(複数バージョンが出来てカオスになることを防ぐ目的です)。実際の国際機関での実務でも採り入れられているようです。もちろん議長のみでまとめることは出来ないのでノートテイカーや編集者を指名して行いますが、作った暫定文書に対し各国からまたああでもないこうでもないと意見が飛び交います。議論が進んでくると各国の設定以上に個人の色が出てきて(勝手に仕切ろうとする人が出てきたり、、)、フレッチャーのダイバーシティの一端を肌で感じると共に、価値観やお作法の異なるインターナショナルな組織をまとめることの難しさも感じることができました。

正直はじめは英語でネイティブ30人をファシリテートするということで不安でしかありませんでしたが、ノンネイティブでも上手く周囲の助けを借りることでどうとでもなる、とりあえず(自信がなくても)堂々としていることが大事である、等々色々な学びを得ることができ、大きな自信となりました。このような国際性の高いメンバーの中でリーダーシップを取る機会を持てるのは、やはり高いダイバーシティと連帯の強いコミュニティのあるフレッチャーならではだと思います。終わってみればフレッチャーに来て良かったと思わせてくれるイベントの1つとなりました。

Mult Nego
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